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第一部「イントロダクション」では、暗号通貨とはそもそも何を目指して作られたものなのか?について簡単にみていきます。


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従来の電子マネー ―例えばEdyやSuica、少し定義を広げるとAmazonギフト券などのサービス内で利用できるポイントなど― は何らかの中央管理機関(Edyなら楽天、SuicaならJR)がその電子マネーを維持管理しています。

一方で、このような中央管理機関のない、非中央集権的な電子マネーを作れないか?という研究は古くからされてきたようですが、 実はいくつかの技術的な課題があり、従来知られている手法ではこれを実現することは困難でした。

技術的な課題には大きく分けて二つ、すなわち「多重支払いの問題」と「改ざんの問題」があります。

いままではこれらの技術的な困難があり非中央集権的な電子マネーを実現することはできなかったのですが、 暗号通貨Bitcoinでは主に「ブロックチェイン」と呼ばれる新しいアルゴリズム(アイディア)と、 プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)と呼ばれる技術を組み合わせることで巧みにこの課題を解決したのです。

そこで本講演ではBitcoinがどのようにこうした技術的な課題を解決したのかを解説しようと思いますが、 本題に入る前に次のスライドでこれら技術的な課題についてもう少し詳しく見ていこうと思います。


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「多重支払いの問題」というのは、ネットワーク上で離れた場所にいる異なる二人の人間に同時に自分のコインを送ろうとする詐欺です。

もともとコインが勝手に増えることはありませんから、最終的にはこの二人のうちどちらか一方のみしかコインを受け取ることはできないのですが、 二人はネットワーク上で遠く離れているために、このようなおかしな状況が発生していることを確実に検知するのは非常に難しく、 単純な方法ではこうした詐欺的行為を確実に防止することは非常に難しい、という問題があります。

そのため、非中央集権的な電子マネーを実現するためには、このような矛盾を確実に検知できる仕組みを考える必要があります。


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一方、「改ざんの問題」というのは、過去の支払いをデータベースを改ざんするなどして無かったことにしてしまう詐欺です。

例えば大量のノードをどこからか(例えば、ボットネット)引き連れて来て、 それらのノードが改ざん済みのデータを配信すると多数決により改ざんされたデータのほうが正当であるとみなされてしまう危険があります。

単純に多数決でどの支払記録が正しく、どの支払記録が間違っているのかを判定してしまうと、 このように比較的簡単に改ざんができてしまうため、 より不正のしにくい方法でデータを改ざんから守る必要があります。


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暗号通貨Bitcoinではこのような技術的な課題を解決するため、ブロックチェインと呼ばれる新しいアルゴリズムが考えだされ、 これをプルーフ・オブ・ワークと呼ばれる手法と組み合わせた新たなスキームが提案されました。

以降ではBitcoinがどのようにして技術的な課題をクリアしたのか、より具体的にみていきます。